母に病が発見された。
夢の話ではない、現実の話だ。わたしが願ったからかもしれない。早くどこかに行ってくれと、できればわたしが受けた仕打ちをそっくりそのまま返してやるような惨たらしい方法でと。
母は娘がじぶんの不幸に寄り添い、できることならじぶんの不幸の身代りになってほしいと思っている人間だ。なぜならば娘だから。娘は母の一部だから。娘の幸福など見たくもない。母を不幸の中に置き去りにして幸福になろうとする娘が許せない。どんなことをしても引きずり戻してやる。親不孝者の娘は世界にたったひとりしかいない。それはわたしだ。
この話には父親は登場しない。彼の人生の半分は下半身に翻弄され、残りの半分は下半身が生みだした莫大な借金に追われることで成り立っている。いまも日本のどこかで刻一刻とふくらみつづける借入金の利息をバック・グランド・ミュージックとして労働に汗やら水やら精子やらをたらしている。そこに妻や子どもたちが入る隙間は1ミクロンほどもありはしない。
気の毒なこと。彼女は物心つく前のじぶんの娘に夫の不始末について延々と聞かせ、娘の将来を台無しにするだけでなく、娘からの愛情を失うことを引き換えにしてまでも、夫の愛をただ求めていたのに。それゆえ病に倒れる結果になってしまったなんて。けれども病に倒れたところで夫の愛は戻ってきませんでしたとさ。
おしまい。
お母さんの病に関しては、「お大事に、何も無いと良いですね。」と心から思います。
でも、そのコトとナカムラさんの幸せが上手くリンクしていかない、というか。
僕の勝手なイメージですが。
でも、家族の事は、外からは分からない部分がどうしてもありますからね。
本人が家族を悪く言っているからと便乗したら、オマエに言われたくないと怒らせた。なーんて、よくある話です。
僕自身はお母さんを全然存じ上げないので、ただナカムラさんの気持ちが安らかになるような結果なら良いなと思うばかりです。