休日は病院を3軒はしごでつぶれた。婦人科と精神科の診察に養父の見舞い。合間に喫茶店でサンドウィッチとコーヒーを注文して食べ、飛び込みで美容院に入り前髪をカットしてもらい、薬局で処方された薬を受け取り、村上春樹の全集のうちの一冊を読んだ。厚さが人差し指の第二関節ほどもある本で、読んでいるうちに腕がくたびれいうことを利かなくなる。移動時間に鞄にしまえば把手はかならず右肩に食い込みあとで丁寧に揉みほぐさなければならないが、持ってきてよかったと思う。1日がかりで集中しても読み終えることのない小説でもなければ3軒の病院のいずれかで意味不明なことばを発したあと泡を吹いて倒れてしまっていただろうから。
婦人科医は問題ないと言い、精神科医は順調ですと言った。ではこの下腹部の痛みはなにによるものなのだろう。恥骨のすぐ上とそこから左右に均等に広がるしくしくとした痛み。強く押すと吐き気に襲われる。おかげで食欲が落ち、昨年からの懸案事項だったダイエットにも成功してしまった。
――泣いている?
そうかもしれない。あんまり泣けないわたしに代わって子宮が涙を流しているのかもしれない。備わってから34年間も大した役割すら持たされず、邪険にすらされる存在に嫌気がさして。
けれども今月も来月も再来月もそのずっと先も、泣くことは決まっている。気の毒だとは思うけれど、それはどうしようもないことだった。