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 母に病が発見された。夢の話ではない、現実の話だ。わたしが願ったからかもしれない。早くどこかに行ってくれと、できればわたしが受けた仕打ちをそっくりそのまま返してやるような惨たらしい方法でと。

 母は娘がじぶんの不幸に寄り添い、できることならじぶんの不幸の身代りになってほしいと思っている人間だ。なぜならば娘だから。娘は母の一部だから。娘の幸福など見たくもない。母を不幸の中に置き去りにして幸福になろうとする娘が許せない。どんなことをしても引きずり戻してやる。親不孝者の娘は世界にたったひとりしかいない。それはわたしだ。

 この話には父親は登場しない。彼の人生の半分は下半身に翻弄され、残りの半分は下半身が生みだした莫大な借金に追われることで成り立っている。いまも日本のどこかで刻一刻とふくらみつづける借入金の利息をバック・グランド・ミュージックとして労働に汗やら水やら精子やらをたらしている。そこに妻や子どもたちが入る隙間は1ミクロンほどもありはしない。

 気の毒なこと。彼女は物心つく前のじぶんの娘に夫の不始末について延々と聞かせ、娘の将来を台無しにするだけでなく、娘からの愛情を失うことを引き換えにしてまでも、夫の愛をただ求めていたのに。それゆえ病に倒れる結果になってしまったなんて。けれども病に倒れたところで夫の愛は戻ってきませんでしたとさ。おしまい
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post time: 22:16, category: 日常, author: ナカムラユエ

 たとえ泣きどおしでまともな日本語がしゃべれなかったとしても、きちんといつもどおりの薬を処方してくれる医者。
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post time: 21:50, category: 診察風景, author: ナカムラユエ

札幌までの列車の中で、僕は三十分ほど眠り、函館の駅近くの書店で買ったジャック・ロンドンの伝記を読んだ。ジャック・ロンドンの波瀾万丈の生涯に比べれば、僕の人生なんて樫の木のてっぺんのほらで胡桃を枕にうとうとと春を待っているリスみたいに平穏そのものに見えた。少なくとも一時的にはそういう気がした。伝記というのはそういうものなのだ。いったい何処の誰が平和にこともなく生きて死んでいった川崎市立図書館員の伝記を読むだろう? 要するに我々は代償行為を求めているのだ。



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post time: 20:00, category: 非日常 from BOOKS, author: ナカムラユエ